本研究の代表をしております国際医療福祉大学保健医療学部作業療法学科教授の関森英伸と申します。この度は貴重なお時間を割き、本システムの確立に向けた研究にご協力いただき誠にありがとうございます。私はこれまで23年に渡り、作業療法士としてなす療育園で外来業務に携わり、その過程で作業療法を実施した子どもたちのその後の社会参加状況に関する追跡調査を実施して参りました。これまでの追跡調査から、ご回答いただいたご家族の多くが我が子について“困りごと”をもち、将来への不安を抱きながら、その“困りごと”に対して問題解決手段を模索している状況が確認されました(2016)。その後、ご家族の支援ニーズ調査を実施し、ご家族の多くが専門機関との継続的な繋がりを期待する半面、「活用頻度が限られるため、生活で浮上した問題に対して予約から対応までに時間がかかる」等、専門機関の支援体制の課題”が明らかとなりました。ご家族の多くは、『困った時に“まずここに連絡を”という電話やメール等で気軽に相談できる窓口や具体的な対応を相談できる窓口』を期待していました。また、現在は特に問題ないが、今後問題が出ないとは限らず今後も相談したい、と我が子の成長が進む過程で“困りごと”が浮上する可能性を感じ備えようとするご家族の思いが確認されました(2017)。これらの調査結果から、あるタイミングでご家族に“困りごと”が浮上した際に迅速に具体的支援に繋がる『支援システム』の必要性を認識し、現在まで自分がなす療育園で担当していたご家族に対して、困りごとに迅速に対応可能な『簡易相談支援システム』をWeb上に開設し試行して参りました(2018~2021)。
これまでの研究からご家族に対してある程度の効果(困りごとの減少や解決策の増加)が確認できましたので、2021年冬季より、栃木県内でWebシステム開発を手掛けているJMAX(株式会社ジェイ・マックス)のご協力を得て、『困りごと解決システムmama and ...』を作成いたしました。
2022年4月~8月の5ヶ月間を『困りごと解決システムmama and...』(Web.ver1)【運用第1期】とし、なす療育園を利用しているご家族を対象にご利用いただき、ご家族、お子様の役に立つのか検証し、一定の効果を得ました。その後、近隣地域の療育施設である一般社団法人つばさの皆様のご協力を得て、2023年6月~7月の2カ月の間を『困りごと解決システムmama and …』(Web.Ver2)【運用第2期】とし、つばさを利用しているご家族およびそこで働く支援スタッフにご利用いただきました。利用後のアンケート結果では、まだまだ情報量の課題はあるものの、「システムが改善したら改めて利用してみたいか?」という質問に、ご家族・スタッフの98.7%から「利用してみたい」という回答をいただきました。今回、なす療育園の方には医療機関における支援システムの一つとして実際に本システムをご活用いただき、合わせて県北地域の保健センター、子育て支援センターで希望者に利用していただき、研究の最終確認【運用第3期】を行わせていただきます。
本研究の意義は、研究が進み『相談支援システム』が確立されることで、なす療育園利用者および県内の療育機関、保健センター、子育て支援センター等を利用されている方に対して、
- 保護者が我が子の子育てに“少しでも安心・安堵して”臨む『心の支え』、『お守り』としての機能
- 保護者が困りごとに対する“問題解決”に向け、実際に“有効”であった情報を蓄積する機能
- 難解・緊急性が高い場合に身近な支援スタッフに相談できる窓口機能
の3点を備えた『相談支援システム』が提供されます。また、利用者(ご家族・お子様)のなす療育園利用機会が減少した後も、困りごとがある際に気軽にアクセスできることで、社会不適応等の悪循環に陥る前に困りごとの解決に役立つことが期待されます。本研究は、学校法人国際医療福祉大学の承認、および国際医療福祉リハビリテーションセンターセンター長である下泉秀夫先生の承認・協力を得て行なっている研究です。この計画にご参加されなくても不利益を受けることは一切ありません。
お手数をおかけいたしますが、これまでの研究経過および研究の意義をお読みいただきご理解、ご賛同いただける場合は、研究の対象者(協力者)として本研究にご参加くださいますようお願い申し上げます。
研究代表
国際医療福祉大学保健医療学部作業療法学科教授
関森 英伸